神奈川の嶋屋と北欧のグリフィン、<S>が取り持つ数奇な関係...
こんにちは、嶋屋のYです。
先週に続き、今週も週明け早々関東地方には大雪予報が出され、
皆さま安全輸送、お疲れさまでした!
私もバス回送の陸送スケジュールを前倒して
出来る限り安全輸送でやり過ごしました。
もっぱら地場ばかり陸送しているので、
ほんと、雪道を走るのが怖くてたまりません。
公共交通インフラに携わる方はそうも言ってはいられないでしょうが、
万難を排してでも...そんな急ぎの陸送なんて実はそう多くないはず、
安全は全てに優先する、
その為にも、個人的には、(強調)個人的にはですが...
大雪に見舞われたら全社休業、
うん、それが一番ですね。
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さて、陸送会社嶋屋のブログを見て下さっているという事は、
大なり小なりトラックに興味がある方が多いと思います。
今回は勇壮なバイキングたちの故郷、
北欧スウェーデンが生み出したSについて。
下の画像(マーク)、どこかで見たことありませんか?
これはグリフィンといって、
上半身は鷲(鷹)、下半身はライオンの姿をした
伝説上の生き物、幻獣です。
グリフィンと聞いてすぐ頭に浮かぶのは...
もちろんトラック乗りの憧れ
北欧スウェーデンが生み出した最強トラック
『SCANIA・スカニア』でしょう!
このスカニアのトラックですが、
かつて日野自動車がスカニア社と業務提携し、
日野エンブレムを入れて販売していたこと、ご存じでしょうか?
遡ること20年前...
2002年3月25日、
都内で日野自動車とスカニア社の業務提携発表がありました。
この提携は簡単にいうと、
スカニア製のトラクタ(トレーラーヘッド)を日野ブランドとして販売、
逆に日野自動車の7~8リッターエンジンをスカニア社に提供
というものでした。
北欧という土地が育んだそのエレガントなスタイルや
国産トラックにはないキャブ周りの造形、
そこから醸し出されるある種の迫力...
私たちがスカニアのトラックを見るとき、
そんなところばかりについ目がいってしまいがちです。
うん、それが普通。
しかしこの業務提携は、
当時ヨーロッパで年々厳しくなっていく排出ガス規制(ユーロ3)を受け、
低燃費高性能なディーゼルエンジンの開発に成功していた
スカニア社の技術を自社トラックに応用したいという
日野自動車の目論見があったのではないでしょうか。
真相はともかく、業務提携発表の翌年2003年9月25日には
早くも「日野スカニア」という商品名で
日野のバッジを付けたスカニアトラックが販売されました。
統計によると、
03年9~10年5月まで累計販売台数は約400台とされています。
その後、新たな排出ガス規制「ポスト新長期」が施行されたこともあり、
2011年7月には業務提携解消の発表がありました。
前置きが長くなりましたが、
この業界を震撼させた日野自動車とスカニアの業務提携の影に
弊社が陸送として大きく関わっていた事実、
2022年現在、それを知っている人間は
もうそんなに多くはいないことでしょう。
神奈川の陸送会社「嶋屋」と
スウェーデンのセーデルテルエに本社を置くスカニア社、
決して相まみえることがなかったであろう両社は、
ある一人のドライバーの手によって
この地にスカニアというトラックメーカーの名を知らしめる
一翼を担うことになったのです。
20年近く前、まだ日本では一部の業界関係者を除くと
スカニアというトラックメーカーの名は
殆ど市井に浸透してはいませんでした。
日野自動車とスカニア社の業務提携が決定されたちょうどその頃、
本国スウェーデン仕様の一台のスカニアトラックが
ブルーのグリフィンを従え横浜大黒ふ頭へとやって来ました。
目的は、その年開催される東京モーターショーへの初お披露目の為です。
まだ「日野スカニア」が発売される前、
ブルーメタリックを纏った本国スウェーデン仕様のスカニアは
日本の道路運送車両の保安基準に則っておらず、
当然仮ナンバーを付けての輸送です。
正確な記録は残っていませんが、
車幅は日本の道路制限である2.5mを超えていたという話も...
そして全高はなんと4.25m!
もちろんハンドルは本国同様、左ハンドルです。
オーマイゴッド!
そんな幻獣グリフィンを身にまとった青い化け物を
横浜の大黒ふ頭から日野自動車シャノン21のある八王子へ...
そしてモーターショーが開催される東京国際展示場まで
陸送したある人物がいます。
それが弊社先代社長である「佐藤小一郎」、その人です!
何せそれまでスカニアなんか聞いたことも、見たこともない
トラックドライバーがほとんどでしたので
一目で国産トラックにはないオーラを発する
ど派手なスカニアを乗って陸送していると
他のドライバーさんから熱い視線をたっぷりと頂いたことでしょう。
モーターショー最終日、あまりの熱狂の渦の中
本国仕様のスカニアは撤収に手間取り、
予定時刻を過ぎても中々引き取ることが出来ず
結局展示場を出発できたのは、
時計の短針が大きく左に傾き切った頃でした。
本来全高制限で進入できない首都高速道路へ入場する際、
料金所の高さ制限バー(当時は竹の棒で出来ていた)を
ご丁寧に収受員の方が持ち上げてくれたかと思う間もなく、
後方からけたたましいサイレンの音が....
黄色い保全パトロールカーが近づいてきて、
「こんな高さのあるトラック走って、
道路に損害が出たらどうするんですかー!責任取れますぅ?」
「えっ!そんな、それは無理ですぅ~」(>_<)
とか、
公団のパトロール車に先導され降ろされた場所が不慣れな場所で、
とりあえず新宿方面に向かえばそこからは甲州街道で...
と道路標識頼りに走行、
案の定、その先には新宿大ガード(青梅街道架道橋)がぁ~!
んっ~ちょっと無理...
その場にスカニアを停車させ立ち往生です。
時刻は既に夜中の10時を過ぎていました。
この時間帯、新宿駅周辺は夜の稼ぎ時とばかりにタクシーが大渋滞。
するとすぐにパトカーがやって来て、
親切に甲州街道まで誘導してくれたそうです。
などなど、
ふぅ~、話を聞いているこっちの方がドキドキしちゃいます。
このような、当時決して表に出せない陸送中の苦労があったそうです。
今のようにスマホナビなんてないし、
高さ制限なんかも経験と勘が頼りの時代だったのでしょうね。
それにしても、全高4.25mだなんて、
海コンのハイキューブという背高が約4.1mなので
それより更に15cmもた・か・い...
そんな車、もはや高速道路以外走るれる場所ないですよ!
スカニア日本上陸の夜明けは、
こうして嶋屋の先代によって、華麗に幕開けしました。
その後、スカニアと日野自動車との業務提携は解消され、
スカニアは日本法人として再出発、
現在は物流の主役である単車のバンタイプの販売に
力を入れているようです。
確かに最近陸送中、ひと際明るいデイライトのトラックが
スカニアだったなんてことがよくあります。
まだまだ、一日に1台とか2台とかの台数ですが、
もっともっと個性的なトラックがたくさん道路を走ると
我々陸送ドライバーの目の保養になって
陸送中の愉しみが増えていいですよね~。
トラックを購入するユーザーは主に運送会社であり、
国産車と比べて経営者にスカニアの経済合理性をアピールするのは
難しいかもしれません。
でもやっぱり、デザインとかかっこよさといった
国産車にはない利点もまた大事です。
ぜひ今度、道路上で青きグリフィンを纏ったスカニアを見たら、
その歴史のはるか彼方に、
神奈川のちっぽけな陸送会社「嶋屋」が孤軍奮闘したことを思い出し
しばし、クスっと笑ってやって下さいね。(^^)/
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