タイヤ脱落事故から学ぶ~今日から陸送ドライバーも、タイヤよし!

query_builder 2022/01/24
ブログ
有限会社嶋屋

こんにちは、嶋屋のYです。
今月20日は暦の上で「大寒(だいかん)」となり、
文字通り空気も大地(道路)も冷え冷えと凍てつく今日この頃ですね。


週の半分は陸送でお世話になる、日野自動車の日高プール。

ここには工場で生産され全国各地へ出荷を待つ何百台ものトラックが

整然と列をなしています。


凍える朝、そんなトラックたちの

フロントガラス、サイド、リア、そしてサイドミラーまで、

ガラスという名の付くところ全てに薄っすらと

真冬の冷気で作られたフロスト状の氷が...


でもちょっと目を凝らしてみると、その前面ガラスに張り付いた
氷の結晶が何と美しいことか!


日野自動車小型トラックデュトロのフロントガラスに描かれた

シンメトリックに細く繊細に続く氷の結晶、

それはまるでガラスの向こうに広がるまだ暗い夜空に輝く星々と

無限の宇宙を転写したかの如く、私を楽しませてくれます。

画像でお見せ出来ないことが大変残念でなりません。


デフロスターを全開にしても中々融け出す気配も見せずに、
この時期朝一の陸送準備にはとても時間がかかります。


しかし、こんなささやかな感動を与えてくれるのも

また今しかありません。


結晶の美しさに見とれながらも

自分を取り戻し、

さあ視界確保の時間だ、


手持ちウエスでガリガリと....


「ごめんね、氷の妖精ちゃんたち」


心の中でそう呟きながら、ガラスに張り付いた
氷の結晶を削り取ります。


さあ、今回もハンドルをマウスに替えて
ブログスタートです!
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ちょっと前になりますが、こんな事故がありました。
群馬県渋川市を走行中のダンプカーから
タイヤ2本が外れて歩行者にぶつかるというタイヤ脱落事故です。


街の防犯カメラが捉えた映像があちこちで流れていたので

ご存じの方も多いと思います。


幸い命は取り留めたものの、被害者の男性(45)は
【大動脈かい離】、

【肝臓損傷】、

【肋骨骨折】の重症でした。


担当医師によると、大動脈がもう少し裂けていたら即死だったようです。


ほんと、命が助かってよかった。


この外れたタイヤですが、直径1.05m、重さ約100kgあります。
ふだん私たち陸送に係わるものがよく目にするもの、
日野自動車で言えば、大型トラック「プロフィア」の

車型FSなどに付いているものですね。


そんな身近なタイヤが車から外れ、延々と500mも転がり、
さらにさらに、中央分離帯を乗り越え

反対車線の歩道を歩いていた男性を後ろから襲ったのです。


国道を走行中のトラックから外れたタイヤが
生身の人間にどれだけの衝撃を与えるかの実験映像が
奇しくも事故の1月前ほどに国土交通省から資料として
公開されていました。

(もちろん生身の人間ではなく、ダミー人形を使っていますが)


まずは
下記資料をご覧下さい。



いかがだったでしょうか。


実験映像ではエンブレムこそ取り外されていましたが、
UDトラックスのクオンが使われていましたね。
そのクオンのトレーラーヘッドの左側にかごが取り付けられており
その中に大型トラックでは標準的なサイズの
「ダンロップ製 エナセーブSP688 11R22.5」が収まっています。


この実験車両が時速60km/hで走行し、

ブレーキを踏んだタイミングで
タイヤが飛び出してくる仕組みです。


そのかごから勢いよく飛び出してきたタイヤの先には
衝突事件などの映像でよく出てくる
成人男性のダミー人形とベビーカーが置いてあります。

ちなみに、このダミー人形を製造している会社ですが
少し前までは株式会社ジャスティという

日本で1社だけが製造しておりました。


で、そのダミー人形の金額はというと
前面衝突試験で使うものだと1体1000万円からと

超高価なもののようです。


ダミー人形には無数のセンサーが埋め込まれており、

今回の映像のように頭部から両手足まで

全て備わったモデルになるとラージサイズで
体重?(重量)100kgを超えるそうです。


センサーを通じて得られたデータを活用して
「もしこれが生身の人間だったら...」ということを実験しながら
安全な乗り物をメーカーさんは開発してくれているのですね。


それを考えれば1000万以上という金額にも納得です。

(ちょっとお高い気はしますが...)
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話が逸れてしまいました。


この実験映像を見て皆さまどんな感想をお持ちですか?


たぶん多くの人がそうであるように
私もこの映像を見て


登場する人形が自分だったら...
ベビーカーに乗っている赤ちゃんが自分の子どもや孫だったら...


そして、

クオンのドライバーがもし自分だったら...


想像するだけで泣けてしまいます。(>_<)


大型トラックのタイヤ脱落事故については
ここ最近確実に増加傾向にあり


令和元年度は統計史上最多の112件が報告されています。
嶋屋の本拠地でもある神奈川県でも実に3件の

車輪脱落事故が報告されています。

(出典:国土交通省令和元年度大型車の車輪脱落事故発生状況より)


これらの発生状況を分析したところ


①冬期(10月~2月)に多く発生
②特に東北地区で多く発生
③車輪脱着作業後1ヶ月以内に多く発生
④タイヤ交換作業が集中する11月に交換した車両の事故が多い
⑤車輪脱落箇所は左後輪に集中


このような傾向が分かりました。
その中で陸送マンとして私が特に気になったのが


③「車輪脱着作業後1ヶ月以内に多く発生」という項目です。


トラックの後輪脱落事故については
全日本トラック協会で運送事業者へ向け事故防止のポイントとして
下記4つを掲げて注意喚起しています。


①ホイール・ナットの規定トルクでの確実な締め付け
②タイヤ交換後、50~100km走行後の増し締め実施
③日常(運行前)点検における、ディスク・ホイールの取付状態の確認
④ホイールに適合したホイール・ボルト及びホイール・ナットの使用


国交省分析中にある車輪脱着っていうのは主に
夏用タイヤから冬に備えてスタッドレスタイヤに

交換したという状況を指しています。


オレには関係ないね、


そんな陸送ドライバーもいるかもしれません。
確かに私たち陸送ドライバーは
季節や現地の天候によってタイヤを交換したりすることは
まず絶対にありません。


真冬の東北だろうと

縦溝タイヤ(サマータイヤ)でバスも陸送しますし、
もちろん定番の裸シャーシだって...


私は怖いのでほとんど関東に閉じこもって陸送していますが、
嶋屋でも去年同僚が、縦溝の大型シャーシを陸送中スタックさせてしまい
社長はじめ総出で救出しに行ったことがあります。


話を戻すと、陸送ドライバーはタイヤ交換などとは確かに無縁ですが、
新車を工場から回送することが業務の多くを占めており、


例えば日野自動車の新車が生産される古河工場から

埼玉県にある日高プールまで経路で約76kmあります。


新車トラックのタイヤって工場で取り付けるんですよね、
工場で生産された新車トラックは殆どが生産され

すぐに出荷、あるいは一時的に置いておくプールという場所へ

輸送されます。


つまり、
国交省分析結果

③車輪脱着作業後1ヶ月以内に多く発生


(そもそも生産段階ではタイヤが付いていないので、
言い換えれば、新車に初めてタイヤを取り付けてから1か月以内)


また、トラック協会注意喚起

②タイヤ交換後、50~100km走行後の増し締めの実施


(これはタイヤ交換をした後、規定トルクで締め付けたナットでも
その後の走行に伴う回転や振動で緩む可能性があるということから、
こちらも言い換えると、古河工場から出荷して50~100km走行後に増し締めが推奨される)


何と!この二つのタイミングが

見事に私たちの陸送業務と合致しているじゃありませんか!


さすがにジャパン品質で組み上げられた日本のトラックメーカーの

新車が工場出荷直後に外れたとか聞いた事はありませんが、
万に一つの可能性で起こることもあるかもしれません。


また、ユーザーさまへ新車をお届けするまでには

何社もの架装工場を経由することも多く
中にはタイヤを取り外しての作業も多々あります。


外したからには取り付けもしなくてならず、

タイヤ脱着後のトラックを輸送するのは
紛れもなく私たち陸送ドライバーです。


陸送ドライバーは架装途中にある半人前の車を陸送することが

殆どですので、キャブ改造された車からは、

作業で残った鉄粉が天井から降り注ぎ、
後部ガラス窓が取り外されたままふっ~うに高速道路を走行したり、


とにかく当たり前が通用しない状況でトラックを運ぶのが
この陸送というお仕事なのです。


これからは、
タイヤがしっかり取り付けられているか
ボルト締結の確認を実施し


タイヤ取り付けよ~し!


そんな点検もしなければならないのかもしれません。
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最後に余談ですが、
タイヤ脱落事故と規格変更の因果関係について。


走行中のタイヤ脱落事故については、

殆どの事故で左後輪側が外れています。


それまで左輪は左ネジのJIS方式だったものが
ISO方式で右ネジへ変更されたことが原因だと言われています。


国産大型トラックは2010年以降、
「平成22年排出ガス規制・ポスト新長期規制」を受け、それまでの


「右側車輪をとめるボルトは右ネジ、左側は左ネジ」という

国内規格(JIS)から


「左側も右ネジ」という国際規格(ISO)に変更されたのです。


JIS規格の場合、

左輪は車輪の回転がネジの締まる方向に回転したのに対し


ISO規格の場合、

左輪の回転の向きとネジが緩む向きが同じで

より緩みやすくなったと言われています。


更に、交差点など左折の際には左後輪側タイヤにはねじれ作用が働き
また、右折時には貨物の重さが遠心力で左外側後輪にかかり

タイヤとホイールの負担が増大します。


このように大型トラックの左後輪タイヤは過酷な状況に晒されており
これらも左後輪に脱落事故が多い原因と言われています。


このトラックの左後輪問題に関して、今さらといった感じですが

斉藤鉄夫・国土交通相は2021年12月19日の閣議後会見で、
近年増加しているトラックの脱輪事故が先の規格変更と関係があるのか
原因について調査分析を進める意向を明らかにしました。


世界市場がグローバル化し、

様々な分野で規格統一が図られることは避けられないことかもしれません。


JIS規格の、

インナーナットで取り付け、

更にアウターナットで締め付けしていた2工程


ISO規格の、

スタッドボルトへホイールナットを締め付けるだけの1工程へ変更され


確かに、インナーナットが不要となった分、重量軽減やコスト削減、
さらに整備工場でのタイヤ脱着時の工程が減り
作業負担の軽減など良い点もあります。


しかし、

生産メーカーだけの判断ではどうにもならないことかもしれませんが、
安全にかかわる最重要部品ですので、
JIS規格に戻すのも一手なのかもしれませんね。


経済効率に反しても時代に逆行するジャパン規格、JIS。
何でもかんでも規格統一すればいいってものじゃない、


渋川の車輪脱落事故から
今回は日本工業規格をあらためて見つめ直す良い機会となりました。


あらためて、自己に遭われた被害者の方の回復を心から願うと同時に


明日の加害者にならないよう、
気を引き締めて安全輸送で陸送しますっ!

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