陸送ドライバーが送迎してみた!そこから見えた『補償行動』とは...
こんにちは、嶋屋ブログ担当のYです。
今朝の外気温は20℃を下回り、
事務所のある神奈川県相模湖周辺は周囲が山に囲まれ
更に潤沢な水を貯える湖を抱える地形の為か、
体感温度は更に2、3℃低く感じます。
今週は本業である「陸送」よりも
相模原市からの委託事業である「給食配送業務」や
先代社長からかれこれ20年以上も続いている
「ゴルフ場送迎業務」に従事することが多く、
普段の陸送とは違った新鮮な経験をさせてもらい、
脳内シナプスがピキピキ!?するのが感じられた週でした。
さて、
今回はそんな中で感じた『ある出来事』についてお話させて頂きます。
ところで皆さま、「送迎バス」というと、
いったいどんなシーンが思い浮かびますか?
すぐに浮かぶのは、企業が工場などへ従業員を何十人もバスで運ぶシーン。
あるいは、小さな幼児たちを園舎へ送迎するバスなんていうのも
あるかもしれませんね。
(かつては嶋屋でも幼稚園の送迎をやっていました、余談ですが...)
いずれも、陸送や物を運ぶ運送とは違って、
運ぶのは「もの言う人(ひと)」です。
そんな人間を何十人も背中にしょってハンドルを握るドライバーは、
ある意味尊敬の対象です。
だって、彼ら彼女たちの命が自分の運転操作に委ねられるのですから!
(ちょっと大袈裟ですが)
小心者の私だったらきっと逃げ出したい気持ちです。
そんな私も、経験はないペーパーですが、
免許だけは「大型二種免許」を持っており、
当時通っていた教習所の指導教官にこんな事を言われました。
「人を乗せる二種免許というのは、何も言わない物を運ぶのとは違って
乱暴な運転をしたら、人はすぐにもの(苦言)を言ってくるよ」
もちろん、貨物を運ぶトラックドライバーだって
荷崩れや運搬物の破損に細心の注意を払って
ハンドルを握っているのは重々承知しております。
けれど、人を運ぶということは
その人の命をも運んでいるのと同じですから、
貨物の破損はクレームや金銭での賠償で済むかもしれませんが、
人の場合はそうはいきません。
そのぐらい、人を運ぶ(乗せる)業務というのは責任重大なことなんだよ、
その教官はそんなことが言いたかったのだと思います。
話を戻しますが、
ついに私も教官の有難い教えを実践する機会に恵まれました。
それが冒頭お話しした、「ゴルフ場の送迎業務」です。
今回お仕事をさせて頂いたのは神奈川県のお隣、
山梨県上野原市にある「桜ヒルズゴルフクラブ」様です。
当方まったくゴルフをやらないので、
恥ずかしながらゴルフ場のことは何も知りません。(^-^;
しかしこちらのゴルフ場は「ヒルズ」という名の通り、
山の地形を生かしたとても美しいコースで、
素人の私がパッと見ただけで、コースの傾斜もあり、
きっとプレイヤーにとっては攻略しがいがあるコースなんだろうな
そう思わせるゴルフ場でした。
さすがにこの時季、「桜」は見られませんでしたが、
春先にはピンク色の山桜がコースのグリーンを彩り、
ゴルフ好きには堪らない時を過ごせる場所になるのでしょう。
で、肝心な送迎業務ですが
基本は最寄り駅からクラブハウスまで、
数名のお客様をお運びするというものです。
私が従事した日は5名ほどのお客様が電車でお見えになりました。
ゴルフ場って自分の車で行くものだとばかり思っていましたが、
少数派とはいえ、お車に乗らない方や、
プレー後の「一杯」を嗜まれる方など
意外に自走?で来られる方もいるのですね。
このゴルフ場、山間の立地を生かしたコースが魅力ですが
それとトレードオフで、最寄りのJR上野原駅から約10km程あります。
普段よく使う圏央道で10kmといったら、日高IC~青梅IC間ぐらい。
高速道路ではあっという間ですが、
ここはクネクネと山道を走り、かつ所々道が狭い!
おまけに送迎ルートの最後は、アンバー(橙)な照明が昭和を感じさせる
秋山トンネルをはじめとした3連トンネルが続きます。
(この秋山トンネルで起きたある出来事が
この後ブログの核心となります...)
送迎で使うハイエースクラスの乗用車でさえ、
場所によっては交互通行に注意を要する箇所があるくらいです。
最寄りであるJR上野原駅の標高は218m、
かたや桜ヒルズゴルフクラブのある秋山地区は406mあるので
その差188m、この標高差を約30分かけて
送迎バスでお客様を運びます。
私にとっては仕事という名の日常でも、
ゴルフをしに遠路やって来られたお客様にとっては
きっと色々な事からの忘却、いや、リフレッシュのひと時であるはず。
そんな方たちを気持ちよくコースまでお届けする為、
普段にも増してハンドル操作とアクセルワークに全集中~!
結果、クレームを頂くことなく業務遂行することができました。
パチパチパチ~(^^)/
で、送迎業務にあたりクラブハウスへ向かっていた時のことです。
先ほどの秋山トンネルで弊社顧問の運転する
スズキの軽自動車「モコ」の動きがどうも怪しい...
このトンネル、車道の幅員はあるのですが、
山岳トンネルよろしく照明がめっぽう暗いのです。
よく見ると照明器具は相当数が備わっているのですが、
3機に1つの割合で間引き点灯しており、
そのアンバーがかった色と照度で前方がよく見えない!
もちろんヘッドライトは点灯していましたが、
乗っていた車は今どきの白い閃光が前方を煌々と照らす
超絶眩しいLEDライトなどではなく、昔ながらのハロゲン球。
そのオレンジ色の光色とトンネル内の照明が
あろうことかシンクロしてしまい、
「あれっ、ライト点いてる?」
そんな感じになってしまうトンネル内環境です。
(少しは伝わったかしら...)
弊社顧問が運転するモコの助手席に乗っていた私の前方視点が、
トンネルに入る前とは明らかに違う。
さっき迄は助手席に座っている私の横にはガードレールが
へばりつくように目に入ったのに
トンネルに入った途端、なぜか段々と自分が道路上で運転しているような
視点になってくる...
もはやモコのダッシュパネル中央付近に途切れ途切れに白線が!
えっ~、センタライン思いっ切りハミ出してるじゃん!
わたし:顧問~、コモ~ン、こもーん、中央に寄り過ぎですよー(=゚ω゚)ノ
こもん:そうですか~、暗くて左の縁石がよく見えないので...(@_@。
そうなんです、
このトンネルは大型でも通行できるほど幅員はあるのですが、
車道の横に歩行者用に盛り上げた縁石が続き、照明が暗いこともあって
タイヤを縁石に接触させないよう
右へ右へと寄っていってしまっていたのです。
もちろん暗いといっても、運転免許(中型第一種免許【8トン限定中型】)の視力基準両目で0.7以上あれば普通に確認できるレベルだとは思います。
<警視庁適性試験の合格基準より>
両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上、
又は一眼の視力が0.3に満たない方、
若しくは一眼が見えない方については、
他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること。
顧問の名誉のため申し上げておきますが、
齢70とはいえ、かつては両目視力2.0を誇り、
陸送業界では伝説の暴れ馬と呼ばれた日野自動車製バスシャーシを
自走で大黒埠頭まで回送していた選ばれし人です。
つまり自動車の運転技術にあってはお墨付きです。
そんな人でも、縁石を避けるために左側方を1mも2mも開けて
対向車線にはみ出るほどハンドルを操作する...
これは専門的には「補償行動」といって、
自分の弱点や機能低下に対し、安全を確保(補償)できる程度まで、
今までしていたことからレベルを下げたり調節したりする行動です。
車の運転操作でいえば、
先ほどのように、縁石がよく見えないので、出来る限り縁石から離れる、
もちろん実際はセンターラインというものがあり、
普通は『若干右寄り』を走行する程度になるのですが...
今回のように、センターラインを跨いでの走行となると
もし対向車がいれば正面衝突の事故リスクが高まりますし、
そこまでいかなくてもセンターライン上のキャッツアイに乗り上げ
タイヤがパンクしたりもしかねません。
今回極端な事例が目の前で起き、
普段あまり意識していない陸送中の自分自身の
「(リスク)補償行動」についてあらためて考えてみました。
すぐに思い浮かんだのが、夜間走行時の走行速度抑制です。
私もかつて、といっても小学生頃まで遡りますが、
視力2.0は当たり前。
学校の視力検査で使うランドルト環(→Cこんなやつ)は
なんで2.0までしかないの~とまで思っていました。
けれど、その後右肩下がりで視力低下し、
スマホやPCの影響等で視力は下がる一方。
特に夜は顕著で、速度は7掛け、
車間距離も同程度確保するようにしています。
補償行動はどんな人でもやっている行動パターンの一つですので、
それ自体は普通のことです。
しかし車の運転操作で問題になるのは、
その人自身が取った補償行動が、
多くの人がいる道路交通環境に於いて
補償行動足り得なくなることです。
前述のセンターラインはみ出し事案ですが、
側方の縁石が見えづらく接触を避けるため、
若干右寄りを走ることは正常な補償行動です。
しかし行き過ぎた補償行動をとると
今度はセンターラインはみ出しという
重大事故に繋がりかねない状況が発生してしまいます。
同様に、
動態視力の衰えから運転速度を極端に落とす補償行動をとったとします。
動態視力の衰えという機能低下にあわせて、
走行速度を落とすのは正しい補償行動ですが、
もし法定速度60km/hの国道1号線で
20~30km/hの低速走行をしていたら...
法的問題はないとしても、現実問題としては大型トラックの追突や、
他車の追い越し時の接触事故の可能性...
少なくても円滑な交通の流れという点では「アウト」ではないでしょうか。
その他、シャーシ回送いう陸送の特異性から、自ずと速度を控えたり、
小型より、大型車の陸送の方がより注意深く運転したり、
普段よく行く納車先より、初めて訪れる納車先の方が
事前に下調べして安全を心掛けたり、
書き出したら枚挙にいとまがありません。
でもこれって、俗にいう
「慣れほど怖いものはない」ってことですよね。
車の運転操作は前方、時には側方の信号機を注視したり、
街中至るところにある死角から何かが飛び出してこないか注意したり、
時には速度オーバーとなっていないかスピードメーターで確認したりと
注意作業の連続です。
補償行動が適正に取れている間は注意力も持続し安全が確保されますが、
慣れて注意力、集中力が低下した時が
一番事故リスクが高まっている状態です。
日本には古からこんな言葉があるじゃないですか、
「勝って兜の緒を締めよ」
敵に勝っても油断しないで、心を引き締めよ、というたとえ。
(出典:デジタル大辞泉)
つまり、成功したからといって気をゆるめず、
さらに心を引き締めろという戒めですね。
う~ん、いい言葉です。
陸送界で例えるなら、
納車先の検収でサインをもらって安心するな、
受け取った伝票を確実に提出し、それがお金になるまでが仕事ぞよ。
そんなところですか。
『補償行動』とその周囲に広がる『慣れ』、
この二つと上手く付き合っていくことが陸送ドライバーには重要なんだな!
今週も陸送ドライバーの皆さま、お疲れさまでした。
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