陸送ドライバーである前に、問われるその先の想像力....

query_builder 2021/07/02
ブログ
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こんにちは、嶋屋Yです。
今日も梅雨真っ盛り?の嶋屋若柳事務所より
ブログ記事を更新しております。


それにしても厚く垂れ込める梅雨空、
ほんと、鬱陶しいですね。


最近の住宅は断熱構造で気密性が高く効率が良い反面、
この時季、梅雨の雨音や鳥のさえずりなどが室内に入り込む余地がなく
時として、退屈に感じることが間々あります。


その点、事務所はペアガラスでも何でもない
シンプルな板ガラスの窓、ガラス一枚向こうには山や畑があり、
敷地には砂利を敷き詰めただけの未舗装の駐車スペース。


今日みたいな雨降りの日には、自然が発する様々な色や音の風景が
バンバン目から耳から入ってきます。


山紫水明とまではいかなくとも、

地元の孫山(標高548m)や城山(標高375m)から
湧き立つ山霧は、しばし時を忘れ(仕事を忘れ!?)

見入ってしまいます。(^-^; 


(表題の画像がそれです、どうですか?)


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さて、今週は陸送業務の方は結構忙しく

神奈川~埼玉~千葉と動き回っておりました。


陸送の仕事をしていると、どうしても交通情報や事故情報など
車や道路に関する情報に敏感になります。


その中でも今週は特に大きな事故情報が飛び込んできました。
ニュースで大きく取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思います。


6月28日午後3時25分ごろ千葉県八街市でトラックが

下校途中の小学生の列に突っ込み、2名の尊い命を奪った事故です。


私は次の理由から、陸送に携わる一人のドライバーとして

この事故に無関心ではいられませんでした。


八街市は架装メーカーがいくつかあり、

私たち陸送ドライバーにとって全く無縁な地ではありません。


また、容疑者の乗っていたトラックはメーカーこそいすゞ製で、
私が頻繁に陸送する日野製ではありませんが、
顔つきが違うだけの普段よく乗るトラック、

クレーン付きの平ボデー車です。


そして、被害に遭ったのは下校途中の小学生。
私にも同じような年頃の子がおり、学校でどのような注意を受け、
どんな風に下校しているか、十分よく知っています。


事故の概要はこうです。


事故の容疑者は現場近くの建築資材運送会社に勤める60歳の男性。
都内の現場に建築資材の鉄筋を運び、現場近くの事業所へ帰社途中、
車道から飛び出してきた歩行者を避けようと急ハンドルを切り電柱に衝突、
そのまま前方を歩行していた下校中の児童をはね飛ばし、

40m進んで止まったというものでした。


詳細はこれからの捜査で明らかにされるでしょうが、

現在報道されているだけでもプロドライバーとしては?(疑問)な

ことが多くあります。


現場はガードレールや歩道がない幅約7メートルの市道で

制限速度は時速60キロでした。
その道路を時速50キロ程度で走行していたようです。


まずもって、中央線もないようなこんな狭い道路が

法的には制限速度60キロというのが驚きですが、
時速50キロで走行する容疑者も相当です。


夜間で人の往来がなければまだしも、前方に児童が歩いていようものなら
私などはおっかなびっくりで、横を通過するのもままなりません。


その後の調べで、容疑者は昼食時にアルコールを摂取していたようで、

つまり飲酒運転です。


更に、脇から人が飛び出してきたと言っていますが、

付近の防犯ビデオの分析では
そのような様子は認められなかったそうです。


現在の防犯カメラは高性能で、一秒も途切れることなくリアルタイムに
日常のあらゆるシーンを記録し続けています。


もし現場付近を録画していた防犯カメラがあるのであれば、
その記録映像は容疑者の(記憶映像よりも
遥かに緻密さと正確さに於いて凌駕しているといっても

過言ではないでしょう。


まして、飲酒状態にある脳の記憶ほど不確かなものはないのですから。


この痛ましい事故が、一人の悪質なドライバーによって引き起こされた
交通死亡事故という事は事実です。


しかし

今回の事故の本質は実はもっと違うところにあるんじゃないか、

そう私は思うのです。


この現場は、かつても児童が巻き込まれる交通事故が発生し、
地域でも危険性の共有が図られ、PTAや地元住民たちは
警察や行政機関、近隣事業所に様々な要望を出していました。


しかし、行政側は予算を理由に安全対策(ガードレール設置等)を

後回しにし、所轄警察も速度の規制等することなく
起きるべきして事故は起きたのだということです。


事故の直接的原因は容疑者の飲酒運転によるものかもしれませんが、
地域社会、ひいては私たち大人たちの怠惰な行動が、

何の罪もない幼い子の命を奪ったのだと。


北村新司・八街市長は30日の会見で
「十分な措置ができていなかった」
市の対策が不十分であったことを認める発言をしています。


ガードレールの設置には幅員が足りず、

拡張には多額の費用が掛かり困難だとも言っています。


だったら一方通行にするとか、

規制速度を30キロにするとか、
心理的に走行速度を落とさせるような道路標示(ペイント)を実施するとか
ガードレール設置までの経過措置としてそれらの安全施策が

なぜできなかったのか。

ゾーン30など各地の住宅街で多くみられるではありませんか。


現場道路は付近の抜け道となっており、ひょっとしたら

行政が規制出来ない何らかの圧力があったのかもしれません。


そこまでではないとしても、一方通行にすると不便だとかの

近隣意向があったのかもしれません。


けれど、

近辺に住む子どもたちは登下校で必ずその道を通行しなくてはならず、
子どもたちに登下校の道程を変更することは出来ないのです。


中には反抗的な子どももいるかもしれませんが、

たいていの子どもたちは大人が示すお手本や教えを何の疑りもなく信じ、

忠実に行動します。


コロナ禍でマスク着用が半ば強制され、

私の7才になる子も一歩自宅から出ると登校から授業中、休み時間でさえ

顔を真っ赤にするまでずっとマスクを着用し続けています。


被害に遭った子どもたちも常日頃から先生たちに、

歩道がなく危険だから右側を一列で歩くように言われていました。


この時も子どもたちは幅員7mの狭い道路の右側を一列で、

重いランドセルを背負い帰路についていました。
そう、大人たちの言われたことを忠実に守って...


それがあろうことか、一列編隊が仇となり、

容疑者の増トントラックはノーブレーキで
幼い子どもたちを次々になぎ倒していったのです。


増トントラックが50キロの速度で

我が身目がけてノーブレーキで突っ込んで来る。
その時いったいどんな気持ちになるのでしょうか。


もちろん、私はそんな経験したことないので分かりません。


殺意を持った何者かが襲ってくる

いや、そんな事を考えている暇もないことでしょう。
しかし、これだけははっきり分かる。


絶対に怖い...


もし、歩道が整備されていたとしたら、
もし、ガードレールが設置されていたとしたら、
もし、現場が規制速度制限を受けた区域であったとしたら...



容疑者の勤める会社は都内にある建築会社の運送子会社で、
今回の事故を受け、親会社の代表取締役社長は

震える声でコメントを発表しました。


この運送子会社と親会社が今後同じように事業継続をしていくのは
極めて困難であることは想像に難くありません。


会社の規模は分かりませんが、同僚やその家族もいることでしょう。
会社がなくなったら、その人たちはどうなるのでしょう。


マスコミは容疑者の高齢な80代の親にまで取材に行っています。
高齢な両親は自分たちの命を捧げてでも償いたいと言っています。


事故の解明はこれからですが、同じようにトラックを運転する

陸送ドライバーとして何を学ぶことが出来るのか。


今日、今からできることは多くあるはずです。


私たちが多く陸送するシャーシという乗り物は

荷重バランスがとても悪く、不安定な車です。
また、市販車では当たり前のサイドバンパーや

タイヤを覆うフェンダーも付いておりません。


大型トラックのタイヤは乗用車と比べるととても大きくて、
例えば日野自動車プロフィアの大型バン(型式:FR)後輪装着タイヤ275/80R22.5で調べると


ブリヂストン製M888タイヤで

外径102.4cm(1024mm)あります。


小学1年生の平均身長は116.5cm

(出典:令和元年度 学校保健統計)ですので、


仮に小学1年生の脇を大型トラックが通過する際は、

子ども目線で言えば
自分の背丈と同じぐらい大きなタイヤが

目の前をグゥォ~と唸りをあげて通過することになります。


私の身長は175cmですが、

外径175cmの巨大タイヤが目の前30センチを

時速50キロでかすめていくことを想像しただけで、


「ふざんけんな~バッキャ野郎ーー!!!!」


となりますよ。


条件の整った場所ではその車は本性を現さず澄まし顔ですが、
ひと度条件が崩れればガラッと豹変し、

あっという間もなく殺人凶器に様変わりします。


そのような乗り物を自らの手で本当に手懐けるのに必要なことは、
長年に渡り培われた運転技術でも、

蓄積された脳内ロードマップでもなく


日々更新し続ける必要のある、その先の想像力


今回はブログとしては重い内容となってしまいましたが、
どうしてもこの場を借りて、綴っておきたかったので

記事にさせて頂きました。


あらためて、

事故に遭われた2名のお子さんのご冥福と

負傷された児童の早期回復をお祈り申し上げます。

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