【陸送屋さんの必修科目!?交通心理学から学ぶカー・コミュニケーション】
こんにちは、嶋屋Yです。
今週もあっという間に一週間が過ぎてしまいました。
特に昨日は冷たい雨の降る中、ユーザー様の大切なお車を陸送してきました。
車種は日野の大型トラック「プロフィア」だったのですが、
内外装を一目見れば分かるといった具合で、愛情のビシッと入った一台でした。
ハンドルカバーやダッシューカバーなど赤系で統一、
オーナーさんの色の好みも推察され、
どんなドライバーがこの車に毎日乗務しているのかな、
そんな思いを巡らすことができるのも、この陸送というお仕事の特徴ですね。
でも、シフトレバーが標準タイプのものから、ジョイスティックを長くしたような長~い形状のものに
変更されていたのには、正直手こずりましたが...(^^;)
運転席に着座しシフトレバーに手を乗せると、その手は自分の肩辺りに位置します。
普通、マニュアル車のシフトレバーといったら、自分の太もも左側辺りに
あるのが自然だと思うのですが、このシフトレバーは左の肩の位置ですよ~
決して操作しやすいとは思わないのですが...
この手のドレスアップをしているトラックドライバーの方をたまに見かけますが、
どうやって運転しているのかぜひ一度この目で見学させてもらいたいですね!
さて、今週は今までとガラッと雰囲気を変え、
ちょっと心理学のお勉強でもと画策しています。
えっ、なぜ心理学?
心理学というとちょっと小難しい感じがしますが、
車の運転はサーキットなどを単独で走ることを除けば
そのほとんどが、周囲に他人の運転する車があり、
今のところまだその車の運転は「人間」が行っているので、
自ずと人対人の非接触コミュニケーションが常に交わされている状態と言えます。
交差点の右折時に、パッシングで道を譲ってもらったことなどは、
ハンドルを握っていれば誰でもあることでしょう。
まさしくこの「道を譲るのでお先にどうぞ」という意思を
ヘッドライトを一瞬点灯させる合図(パッシング)を使って
相手に伝えているのがコミュニケーションです。
車の運転に限りませんが、円滑なコミュニケーションは
道路交通に於いても有効で、ふと周りを見渡せば、
確かに運転が上手だな~と思わせる人は、このコミュニケーションも
上手な人が多いような気がしてきます。
皆さんの周りはいかがですか?
このようなコミュニケーションは、交通分野では
「カー・コミュニケーション」として立派な研究対象となっているのです。
私の所属する日本交通心理学会の蓮華先生は、
この分野の草分けで、四半世紀以上前から多くの論文を発表されています。
全てをご紹介はできませんが、今回はカーコミュニケーションの
ほんの一部を切り取って、ハンドルを握るドライバーなら
アルアルで身近な内容をお一つお届けします。
道路上で行われるカーコミュニケーションですが、
大きく分けると4つの(手段)チャンネルに分類されます。
①車両の付属装置によるもの(ウィンカー、ハザードランプ、ヘッドライト、ブレーキランプ、クラクションetc)
②車両それ自体(車のポジションや車両挙動)
③運転者自身による非言語的手段(アイコンタクト、身振り、顔の表情)
④運転者自身による直接言語的手段(窓から声を出す等)
では、この4つのコミュニケーションチャンネルについて
説明していきますね。
順番が逆となりますが、
④の直接言語的手段については、意外と運転中使うことはないですね。
というのも、運転中はエンジンの音や周りの騒音も重なって
直接言語では伝えたい相手に中々声が届きづらいからです。
直接言語手段に訴えるのは、相手が急に割り込んできて
アワや事故ってしまいそうな時に
「バカ野郎っ-!どんな走りしとるんじゃ~!!」
というような場面ぐらいですかね。(笑)
③の非言語的手段、これはどうでしょうか。
私はよく陸送中、こんな場面で非言語的カーコミュニケーションをしています。
大型トラック、特にシャーシと呼ばれる後ろのタイヤがむき出しの車は
普段からいつも後輪の巻込みに注意して陸送しています。
特に朝夕などの時間帯、いつも以上に速度を落として走っていると、
横断歩道手前で小学生が道路を横断しようと頭をキョロキョロさせている場面に遭遇します。
子どもからはきっと見上げるように大きくて高いキャブの運転席から私は、
右手を右~左へ、時には左~右へと振って『どうぞ、どうぞ、気をつけて渡ってね~いってらっしゃ~い』というメッセージを伝えます。
すると子どもたちは、たいがい「コクン」と軽く会釈をし、足早に横断していきます。
(それにしても、子どもってかわいいよなぁ~)
それ以外にも、駐車場から出庫しようとする車の運転手にアイコンタクトで進路を譲ったり、
車庫入れの際、誘導員が指示した駐車スペースに、
「了解~!一度頭を振ってバックでそこに入れるよー!」
みたいな、大きく手をあげて合図を送ってみたりと
意外に頻繁に使っているのではないでしょうか。
お次は誰でも納得の
①車両の付属装置によるカーコミュニケーションです。
これはもはや説明不要でしょうが、ブログページ数を積み上げるため、
否っ、ひょっとしたら昨日免許取りました!みたいな
若葉マークな方がこのブログを読んでいるかもしれないので、
丁寧にご説明しなければ!
ハザードランプは道路運送車両の保安基準で装着が義務付けられており、
また道路交通法施行令第18条2項に定められている通り、
夜間、5.5メートル以上の道路に停車、駐停車するときはハザードランプを点滅させることが義務付けられています。
霧や雨などで視界が悪いとき、または高速道路上で車が故障し停車しなくてはならないとき、ハザードランプをつけて道路端に停車し、後続車に危険を知らせたりもします。
と、本来はこのような用途で使われるハザードランプですが、
多くのドライバーさんは進路を譲ってもらった時に、
「道を譲ってくれて、どうもありがとう!」という意思を伝える、
俗にいう「サンキュー・ハザード」として使っていることが多いのではないでしょうか。
このサンキューハザードは昨今だいぶ普及していますが、
少なくとも私が自動車の免許を取得した数十年前には、
教習所で教えてもらった記憶はありません。
ドイツのトラック輸送の職業ドライバーが走行中に、
車両同士でコミュニケーションをとるための「慣習」として始まったなど、
サンキューハザードの起源は諸説あるようですが、
きっと日本でも同じように大型トラックのドライバーが、どうにか伝えたい思いをハザードランプの点滅という方法で表現し、仲間内で広がっていったというのが真相ではないかと私は考えています。
以前はトラックのハザードスイッチと言えば、ハンドル左側のコラムレバーに内蔵され、
レバーを押し上げてハザード点滅というのが一般的でした。
しかし、最近の車種は乗用車のように、全面パネルに単独スイッチとして設置してある車が多く、
ハンドルから一瞬手を離さなければならないという点で
「サンキュー」がしづらくなったと感じるのは私だけではないはずです。
もちろん本来の意図は正式名称が表すように、『非常点滅灯』ですので、
非常時でも咄嗟に、また視覚的に分かりやすいようにという観点から、
他の機能スイッチと共用しない単独式スイッチという形になったのでしょう。
話しがだいぶ逸れました。
サンキューハザード以外では、パッシングも相手に道を譲るときのサイン替わりに使ったり、クラクションなどもサンキュークラクションのように、「どうもありがとう」の意味を込めて鳴らしたりもします。
但し、これらは必ずしも謝意を伝える時ばかりではなく、時には「怒り」のメッセージとして使われることもあります。
このような使い方は、
道路交通法第54条第2項で
「標識で指示された場所か危険回避の目的以外で使うことは禁じる」
とされています。
しかし、急に割り込まれ急ハンドルで回避したものの、
一歩間違えればあわや大事故に繋がりそうになったとか、
前車が不必要に急ブレーキを踏んで、追突しそうになったとか、
そんな時に
「ブゥッ~~ブゥッ~~ブゥッーーー!」
と道路で聞いたことありませんか。
パッシングもそうですが、これら装置によるカーコミュニケーションは
使う時間の長さで、好意的な意思や不愉快な(時には怒りの)意思を相手に伝える
コミュニケーションの方法となります。
最後に②の車両それ自体によるコミュニケーションですが、
これは実際は少ないのではないのでしょうか。
大きな車体を右に左に揺らしたりする行為はもちろん危険であるし、
これも相当な攻撃性をもって、いわゆる煽り運転をするような場面しか
私には思い浮かびません。
交通心理学の分野では、運転者が相手から見える場合(可視性)と
見えない場合(不可視性)に於けるクラクション反応率の違いや、
路上の激怒(所謂road rage)の研究など、
道路交通に携わる人には興味深い研究が沢山為されています。
研究結果は交通心理学入門(交通心理学会・星雲社)などの書籍にもなっていますので、ご興味のある方は手にしてみるのも楽しいですよ。
陸送でトラックのハンドルを握るようになってそう長くありませんが、
カナダの精神科医ティルマンが残した有名な言葉
「人は生きるように運転する」
この言葉が私は好きで、いつも頭の中をエンドレスに流れています。
『俺は生きるために運転する』って?
そうならないよう、カーコミュニケーションに気を配り
ハンドルを握りたいと思いまーす!(^^♪
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